鱗手オキル短編集
プレゼントの起源





アリエンナはアリエンノにフライパンをプレゼントしようとしていた。
フライパンはいいものだ。フライをつくって、フライをくう。
それはいかにもヒューマンらしいハピネスである。

アリエンノはアリエンナにシャンプーをプレゼントしようとしていた。
シャンプーもまたいいものだ。バブルをつくって、バブルをくう。
これもいかにもヒューマンらしいハピネスである。

アリエンナとアリエンノはプレゼントにいいタイミングをサーチしていた。
なんといってプレゼントはヒューマン・ライフのハイライトである。
それはミスコンプリートしてはならないミッションなのだ。

アリエンノとアリエンナはプレゼント・シングをこっそりキャリーした。
なんといってもシークレットこそがライフのピークをつくるのだ。
そのミッションにセカンド・チャンスはないのである。

アリエンナいわく、「アリエンノ、あんたとってもいかすよ」
「そうでもないさ」とアリエンノ。「そうでもあるよ」とアリエンナ。
「いったいどこがいかすんだ」と、フランクにきくアリエンノ。

「レスポンス・システム」とアリエンナ。アリエンノはそれをもっていた。
「あんたのそれは、いかにもそれなの」と、アリエンナ。
いかにもヒューマンというかんじのベスト・レスポンス。
いかにもヒューマンというかんじのベスト・システム。

アリエンノいわく、「アリエンナ、きみこそがベストだよ」
「ベストじゃあない」とアリエンナ、「ベストのベスト」とアリエンノ。
「いったいどうしてベストだね」と、フランクにきくアリエンナ。

「アームにアイ」とアリエンノ。アリエンナはどっちももっていた。
「きみのそいつは、いかにもそいつさ」と、アリエンノ。
いかにもヒューマンというかんじのヒューマンアーム。
いかにもヒューマンというかんじのヒューマンアイ。

アリエンナとアリエンノは、こうしてひとつのラブ・ストーリーをつくった。
ラブ・ストーリーはいいものだ。ラブをつくって、ストーリーをくう。
それはいかにもヒューマンらしいハピネスである。
プレゼントのプレパレーションはもうすっかりできあがっていた。

アリエンナはアリエンノに、フライパンとアリエンナ・ヘッドをあげた。
フライをつくって、フライをくうのに、アリエンナ・ヘッドはユースフルだ。
「フライパン、あんたとってもいかすよ」とアリエンノ。とってもうれしそうだ。

アリエンノはアリエンナに、シャンプーとアリエンノ・ボイスをあげた。
バブルをつくって、バブルをくうにも、アリエンノ・ボイスは不可欠だ。
「自意識を基礎づける上で最重要の所与」とアリエンナ。とってもうれしそうだ。

アリエンナとアリエンノは、ミラーのようににらめっこした。
「エライコネー」とアリエンナ。
「エライコネー」とアリエンノ。
「エライコネー」とアリエンナ・アリエンノ。もうそればかりいっている。


出演者からの一言

Alien-A : どこにでもいそうな顔してるってよく言われます。それが悲しくもあり嬉しくもあるよ。
Alien-0 : 存在感薄いどころかほぼゼロってよく言われます。別に嬉しくも悲しくもないよ。
フライパン : 最近、卵焼きをつくるのに凝ってます。つくるっていいね。
シャンプー : 万物流転の考えが楽観を生むこともあると思う今日この頃です。
プレゼント : こんにちは、現在です。あなたの後ろにいるの、なんちゃって。言ってみただけ。