ルーとウサギのメートヒェン
第4話 ルーとしっぽ




ルーのベッドのまわりは、とてもにぎやかになりました。
「おはよう。ルー」
メートヒェンが言いました。
「目がさめた? ルー」
子犬のユンクがルーのお顔をペロペロなめます。
「おねぼうさんね、ルー」
ネコのシュベスターが少しはなれたところから言いました。
「もうすぐママがくるわよ」
キリンのタンテが言いました。
「おれのしっぽちぎらないでくれよ」
トカゲのブルーダーがグルリと体をひねってルーを見ます。言われてルーはぎゅっとにぎっていたトカゲのしっぽをはなすと体を起こして笑います。

「わあ! お友だちがいっぱいだ」
「よかったわね、ルー」
メートヒェンは、ユンクとブルーダーをわきにおとすと、自分がルーのひざにのりました。
「ずるいよ! ボクの方が先にだっこしてもらってたのに……」
ユンクがきゃんきゃん言いました。
「そうだ。ルーはおれのしっぽをにぎってたんだぞ」
ブルーダーももんくをつけます。

「どうでもいいけど、ルー、おしりをどかしてくれないか? わたしが下じきになっているんだが……」
下から声がしました。
「だれ?」
ルーがおどろいておしりをどかすと、ぺちゃんこにつぶれた白い物が出てきました。
「何? これ……」
「これとは何だ? わたしはオンケルだぞ」
「おじさん……?」
ルーにはまだ、それが何なのかわかりません。ねじったり、おり曲げてみたり、ひっくり返したりしています。
「こらっ! やめろ!」
オンケルがさけびます。

「どうしてきみは平たいの? どうして白いの? どうしてまるいの? どうして?」
ルーは、ほかのぬいぐるみとはちがうオンケルのことがとてもふしぎに思えたのです。
「わたしはクラゲだ」
「クラゲってなあに?」
ルーはまだクラゲを見たことがありませんでした。
「クラゲは海にいるのよ」
メートヒェンが言いました。
「海?」

「そうだ。わたしはいだいなのだ」
オンケルがえらそうに言いました。でも、ルーにはそんなことなどわかりません。平たいオンケルの体をくるくるまるめたり、のばしたりして遊んでいます。
「おもしろーい!」
ルーは平たいオンケルをぱんぱんたたいて言いました。それから、もう一度まるめると、穴からのぞいてみました。
「ぼうえんきょうみたい! ほら、あそこに海が見えるよ」
青いカーテンを見て、ルーはうれしそうに言いました。

「海はすごーく大きくてすごいの」
ルーが言いました。
「ルーは海を見たの?」
ユンクがききます。
「うん。パパとママとみんなで行ったの。ぼく、うきわにつかまって泳いだんだよ」
「それって泳いだとは言わないんじゃない?」
シュベスターが笑います。

「泳いだのさ。わたしだっていつも海ではそうしてる。水にうかぶのは気もちがいいんだ」
オンケルが言いました。
「うん。気もちいいの。また海に行きたいな」
「行けるわよ。次の夏がきたら……」
メートヒェンが言いました。
「そうだね」
ルーはうれしそうでした。
「その時には、わたしもつれて行ってくれるかい?」
オンケルがききます。
「もちろんだよ。みんないっしょに行こうね」
ルーの言葉に、みんな、うれしそうにしっぽをパタパタふりました。

「あはは。くすぐったいよ」
ルーがほっぺにかさったしっぽをつかみます。
「シュベスターのしっぽはほっそりと長いね。ユンクのしっぽはふさふさしてる」
ルーはみんなのシッポをじゅんばんにさわって言いました。
「メートヒェンのしっぽは、まるくてふわふわ。タンテはかわいいのがついてるね。それから、オンケルは……」
ルーはクラゲの体のあちこちを見ました。でも、しっぽらしき物がありません。
「オンケルのしっぽは? どこにもないよ。どうしよう。きっととれちゃったんだ」
ルーが泣きそうに言いました。
「しっぽがとれるなんてことありえないわよ」
シュベスターが言いました。でも、ルーはなっとくがいきません。

「メートヒェンのはとれたもん」
それを聞いて、みんなはじっとそちらを見ました。メートヒェンは顔を赤くして言いました。
「それは、ルーがかじったから……」
「オンケルのもルーがかじったの?」
ユンクがききます。
「ううん。かじってないよ」
「それじゃあ、どうしてとれたんでしょう」
タンテがふしぎそうに言いました。

「おい、まて。これがこいつのシッポなんじゃないか?」
ブルーダーがオンケルの体からちょびっとだけはみだしている小さな物を見つけました。
「ほんとだ! あった! オンケルのしっぽ」
ルーがそれをつかんで言いました。
「クラゲのしっぽってすごく小さいんだね。ぼく、ちっとも気がつかなかったよ」
ほんとうはそれはクラゲの足でした。でも、オンケルもよくわからなかったのでだまっていることにしました。

「ブルーダーのしっぽも見せて」
ルーがトカゲのしっぽをつかみます。すると、プチッと音がして、しっぽが切れてしまいました。前足がマットにひっかかっていたのです。
「ブルーダーのしっぽが取れちゃった!」
ルーがしっぽをもって泣きました。ブルーダーは体をひねっておしりのようすを見ようとしましたが、もう少しのところで見えません。
「まあ、たいへんだわ」
タンテがオーバーに言いました。
「ほんとに切れちゃったの?」
ユンクがおどろいてききました。
「ルーってばバカ力なのね」
シュベスターがあきれます。
「しっぽって取れやすい物なのか?」
オンケルも言います。
「おれのシッポ……」
ブルーダーがくらい顔で言いました。

「あーん。ブルーダーのしっぽ……」
ルーがわんわん泣きました。
「泣くなよ」
トカゲが言います。
「おれはかまわないぜ。べつにしっぽなんかなくたってさ。ルーにもしっぽなんかないだろ?」
「ブルーダー……」
「おれとおまえは同じしっぽなしのなかまになったんだ」
その言葉を聞いて、ルーはうれしくなりました。

「そういえば、トカゲのしっぽって切れるんじゃない?」
メートヒェンが言いました。
「そうそう、庭でチョロチョロしてるトカゲをおどかしてやると、しっぽを切って逃げていくのよ。おもしろいったらないの」
シュベスターが言いました。
「うん。よくしっぽのないトカゲも見るよね」
ユンクも言います。
「トカゲは、おどろくと自分のしっぽを切って逃げていくしゅうせいがあるって聞いたわ」
メートヒェンが言いました。
「まあ、おもしろいのね」
タンテがきょうみぶかそうな顔をします。
「トカゲってのは、おくびょうなんだな」
オンケルが言いました。

「言わないで! ブルーダーがかわいそうだよ」
ルーがかばいました。
「ルー、おまえ、いいやつだな」
ブルーダーが見上げます。
「ううん。ぼくがきみのしっぽを取っちゃったのがいけないんだもの」
そう言って、ルーはトカゲをだっこしました。プチ。また、そんな音がしました。
「あれ? くっついちゃった」
そう。トカゲのしっぽはマジックテープでつけたり、取ったりできるようになっていたのです。
「これはまほうね」
メートヒェンが言いました。
「ルーのやさしさというまほうだ」
くっついたしっぽを見て、ブルーダーもまんぞくそうにほほえみました。

「ねえ、どうして人間にはしっぽがないの?」
ルーがききます。
「さあ、どうしてかしらねえ」
タンテがおっとりと言いました。
「ほんと、どうしてなんだろ?」
ユンクもふしぎそうに言いました。
「きっとにあわないからよ」
シュベスターがすっと目を細めて言いました。

「どうして?」
ルーがききます。
「どう見たって、こんなにゆうがで美しいしっぽ、人間にはもったいなさすぎるもの」
シュベスターは、じまんそうにルーの鼻先でしっぽをゆらゆらさせました。それを見て、ルーはとても悲しそうな顔をしました。
「おまえ、ちょっと長いしっぽがあるからって、ルーを泣かせたら、おれがだまっちゃいないぞ」
ブルーダーが言いました。
「あら、弱虫トカゲが何言うの?」
シュベスターはすずしい顔です。
「かみついてやるぞ」
ブルーダーがおどします。
「やれるもんならやってみなさいよ。どうせ、すぐにしっぽを切って逃げだしちゃうくせに……」
2ひきは、ガンとにらみ合いました。

「やめてよ! ぼくのせいでケンカしないで」
ルーがとめます。
「そうだ。大人げないぞ」
オンケルが言いました。
「でも、昔は、人間にもしっぽがあったっていう話もあるわよ」
メートヒェンが言いました。
「ほんと?」
ルーがききます。ほかのみんなもそちらを見ました。
「ええ。そうよ。でも、人間にとってしっぽはいらなくなってしまったから小さくなって、今はおしりの中にしまってあるって聞いたわ」
「おしりの中に?」
メートヒェンの言葉に、みんなはそわそわと自分のおしりや、ほかのぬいぐるみたちのおしりを見ました。

「それじゃあ、今も人間にはしっぽがあるの?」
ルーがききます。
「でも、ずっと長いことしまいっぱなしになっているから、くっついて固い骨になってしまったの」
メートヒェンが言いました。
「へえ。そうなんだ。ボク、ちっとも知らなかった」
ユンクが関心したように言いました。
「ほんとうかね?」
オンケルがなっとくいかなそうにききました。
「それなら、しょうこをさがしに行きましょう」
メートヒェンが言いました。

メートヒェンが窓を開けると、ヒューッと風がすべりこんできました。
「少し寒いね」
ルーが言います。
「それじゃあ、わたしがマントのかわりになってあげよう」
オンケルが言いました。
「ありがとう。こうすると、とってもあったかいね」
ルーは、オンケルを広げて体にまきつけました。

「まあ、ルーのサイズにピッタリね」
タンテがホホホと笑います。
「では、わたしの背中に乗りなさい」
タンテが言うので、ルーはキリンの背中にまたがりました。
「ちょうどピッタリだ」
うれしそうに言うと、ルーはタンテの首につかまりました。
「お、さまになっているじゃないか」
ブルーダーが言いました。
「カッコいいよ、ルー。それで剣をもったら、中世の騎士みたい」
ユンクがきゃんきゃんさわぎます。

「ふふふ。騎士というより、ミノムシみたいでおかしいわ」
シュベスターが笑います。
「いじわるなこと、言うなよ。ぐずぐずしてると、おいて行くぞ」
ブルーダーがかみつくように言いました。
「ふーんだ。わたしは、ゆっくりゆーがにあとから行くわ」
シュベスターは、リボンをととのえ、毛なみがちゃんとしているかをたしかめました。
「それじゃあ、出発よ」
メートヒェンが言いました。ユンクとタンテが空をかけ、ブルーダーはメートヒェンの肩に乗って外へ出ました。それから、ゆっくりシュベスターもみんなのあとからついてきました。

「ねえ、あの森の向こうには何があるの?」
ルーがききます。
「えーとね、お花畑」
メートヒェンが言いました。
「わあ! ぼく、行ってみたい」
ルーが言います。
「ボクも!」
ユンクもしっぽをふって言いました。ほかのみんなも、
「さんせい! さんせい!」
と、言いました。
「そうね。今日は少し遠くまで行ってみましょうか」
メートヒェンが言いました。

そこには小さな小川があって、まわりにしげった木や草が、風にさわさわとゆれていました。
「わあ! きれいなお花がたくさんあるね」
ルーがうれしそうに言いました。春にはまだ少し早いのに、そこだけ春の日だまりのようでした。
「すごいや! ここなら、おもいきり走れるね」
ユンクがはしゃいで言いました。
「すぐそこにガケがあるぞ。はしゃぎすぎて落っこちるなよ」
ブルーダーがちゅういします。
「平気だよ。ボク、行ってくるね」
そう言うと、ユンクはしっぽをふってかけ出しました。

「やれやれ。元気だなあ」
オンケルが言いました。
「少しあつくなっちゃった」
ルーはオンケルをはずして、足もとにひろげました。
「ルー、これじゃ、何も見えないよ。ひっくりかえしておくれ」
「あ、ごめんね、オンケル。だって、きみ、どっちが前だかうしろなのか、まるでわからないんだもの」
ルーは、クラゲをさかさまにしてあげました。
「それにしても、ここは、ほんとうにきもちがよいところね」
タンテが、すーっとしんこきゅうして言いました。

「ルー、こっちにきれいなお花があるわよ」
メートヒェンがよんだので、ルーはいそいでそちらにいきました。
「ほんとうだ。これをつんでママにもってかえろう」
ルーは赤やきいろやピンクの花を見つけてよろこびました。
「おや? そういえば、あのくそなまいきなネコヤローはどこだ? ここにはえてるネコジャラシでからかってやろうぜ」
ブルーダーが大きな目をギョロギョロさせて言いました。
「あら、ほんと、おそいわね。まいごになってるのかしら?」
タンテがおっとり言いました。
「しつれいね! このわたしがまいごになんかなるわけないじゃない」
タンテのうしろから顔を出したシュベスターが言いました。
「こんなに遠くまで飛ぶんだもの。わたし、すっかりのどがかわいちゃったわ」
そう言うと、ネコはゆうがに歩いて、川のほとりに近づきました。

「あ! シュベスターだ。ねえ、見て! ぼく、お花をつんだの」
ルーがうれしそうに言いました。
「え? お花?」
ちょうど土手をおりようとしていたシュベスターがふりむきました。と、そのひょうしに、ネコの足がつるりんとすべりました。
「ニャッ!」
シュベスターはあわてて何かにつかまろうと、前足で土手をカリカリしました。けれど、何もつかまるものがありません。
「ニャー! 落ちるぅ!」

「早くおれのしっぽにつかまれ!」
かけつけてきたブルーダーがしっぽをつき出して言いました。シュベスターはいそいでトカゲのしっぽにつかまりました。でも……。プチッと音をさせてトカゲのしっぽは切れてしまいました。
「ミャーッ!」
ネコはひめいをあげました。このままでは水に落ちてしまいます。でも、ぎりぎりのところでオンケルがシュベスターの下へもぐりこみました。そして、じゅうたんのようにシュベスターをのせて、土手の上までもちあげてやりました。
「フー。助かったわ。それにしても、ほんと、使えないしっぽね」
シュベスターは切れたしっぽをトカゲになげつけて言いました。

「まあまあ。ブルーダーだって助けようとしたんだし……」
タンテがなだめるように言いました。
「そうだよ。水に落ちなくてよかったね」
ユンクもきて言いました。
「そうだね。あれ? あんなところにもお花が咲いているよ」
ルーが川のふちをゆびさして言いました。
「あ! チョウチョさんがいる!」
ルーはそちらに向かって手をのばしました。
「あーっ!」
ルーはすべり落ちそうになってさけびます。すぐ前に土手があったのに、ルーは足もとを見なかったのです。

「ルー!」
ルーはひっしに手をのばしました。そして、ちょうどふちからたれさがっていたシュベスターのしっぽにつかまりました。
「ぎゃっ!」
ルーの重さにひきずられてシュベスターは土手から落ちそうになりました。
「いけないっ! おれのしっぽのねもとにつかまれ!」
ブルーダーが言いました。ネコはトカゲのしっぽにつかまりました。そして、トカゲはタンテのしっぽに、タンテはユンクのしっぽにつかまりました。けれど、ユンクはつかまるものがありません。みんなはずるずると落ちていきました。

「あぶないっ! ルー!」
メートヒェンが、あわててルーの体をつかまえました。そして、そのまま土手の上まで飛びました。ルーはシュベスターのしっぽをつかんでいました。そして、ネコはブルーダーのしっぽのねもとを、トカゲはタンテのしっぽ、キリンはユンクのしっぽをしっかりつかんでいました。みんなはさかさまにぶら下がったままもち上げられてブランコのようにゆれました。
「あー」
「みゃあ」
「わあ」
「んまっ」
「キャン」
メートヒェンがすごい力でひっぱったので、みんなは、ぐるぐるとゆれながら、どすんと土手の上におちました。でも、ルーもみんなもぶじでした。さいごにひらひらとオンケルがまいおりて、平たくなりました。

「ふう。たすかったな」
ブルーダーが言いました。
「ルーが水におちなくてよかったわ」
メートヒェンが言いました。
「ほんと。水遊びをするには、まだ早いものねえ」
タンテもおっとりと言いました。
「きゃんきゃん。ほんと、ビックリしたよ」
ユンクが走り回って言いました。
「あーん」
と、ルーが泣きました。
「もうだいじょうぶだよ」
オンケルがなだめます。
「そうそう。もうこわくないのよ」
タンテもやさしく言いました。
「これからは、歩く時には、ちゃんと下を見て歩くのね」
シュベスターがお姉さんぶって言いました。

「あーんあん」
でも、ルーはまだ泣いていました。
「泣かないで、ルー。よほどこわかったのね。でも、もう平気なのよ」
メートヒェンが言いました。
「ところで、ルー、その手にもっているものは何だ?」
ブルーダーが言いました。ルーはぴたりと泣くのをやめると、ぎゅっとにぎっていたものを見つめて首をひねりました。
「何だろう?」
それは、細くて長くてやわらかいものでした。
「それってもしかして……」
メートヒェンがさけびました。それから、みんなはいっせいにシュベスターの方を見ました。
「え?」
シュベスターは、おそるおそる自分のおしりを見てがくぜんとしました。
「みゃーっ!」

シュベスターがさけびました。
「ニャーン。わたしのしっぽ……!」
「ほんとだね。シュベスターのおしりにぴったりだ」
ルーがおしりにくっつけて言いました。
「でも、どうしてだろ? くっつかないよ。ブルーダーのしっぽはちゃんとくっつくのに……」
ルーがふしぎそうに言いました。

「わたしのしっぽはじょうとうなのよ。プツプツ切れやすいトカゲのしっぽなんかといっしょにしないで!」
ネコはプンプン怒って言いました。
「ふんだ。おまえのなんか切れたらくっつきもしないくせに……」
ブルーダーがにらみます。
「ミャー! ひどいわ」
おしりからはなれてしまったしっぽをながめて、ネコは悲しそうに鳴きました。

「ごめんね。わざとじゃないんだ。ほんとだよ」
ルーはこまってネコを見ました。
「大じょうぶよ。きっとまたママが直してくれるわ」
メートヒェンが言いました。
「そうそう。針と糸でチクチクぬってもらえばいいんだわ」
タンテも言います。
「チクチクぬうんだって……。とっても痛そう」
ユンクがキュンとしっぽをたれて言いました。
「ミャーン。痛いのなんていやあ!」
シュベスターがさけびます。

「しょうがないだろ? それくらいがまんしろよ」
ブルーダーが言いました。
「そうだ。時にはがまんしなければならないこともある」
オンケルが言います。
「たとえば、ルーがわたしをおしりの下にしいたとしても、ルーがわたしをまるめてたいこのようにたたいても、わたしはいつだってたえてきたのだ」
オンケルの言葉を聞いているうちに、ルーは悲しくなりました。
「それって、ぼくが悪い子だからってことなの?」
「ルー……」
メートヒェンが首を横にふりました。

「ちがうわ。ぜんぶほんとうのことだけど、ルーはちっとも悪くないのよ」
「そうだ。ウサギさんの言うとおり。わたしはルーが好きだから……いくらでもおしりにしかれてもいいんだよ。大好きなルーのおしりだから……」
オンケルが言いました。
「ありがとう。オンケル。とてもうれしいよ。メートヒェンも……。だけど……」
ルーはシュベスターの方をそっと見ました。ネコが怒っていないかとしんぱいになったのです。
「何よ? こんなことくらいで怒ったりするものですか! 見て! ステキでしょう?」
ネコはにっと笑うと、とくいそうにしっぽのムチをふりました。

しっぽのムチは、ヒュンと空気をふるわせて、ピシリと地面をうちました。草のかげにいたアリたちが、あわててそこをにげだします。
「わあ。すごいね、シュベスター。ぼくもやってみたい」
ルーが言います。
「ふふ。いいわよ。でも、よだれなんかつけないでよ」
ネコはすまして言いました。
「うん。だいじょうぶ。それじゃあ、いくよ。えいっ!」
そう言うと、ルーはしっぽのムチをふりました。でも、さっきシュベスターがしていたように、ヒュンと空気はふるえません。
「あれ? おかしいな」
ルーはなんどもふりました。でも、やっぱり何もおこりません。

「ルー、もっと力をこめなきゃ」
メートヒェンが言いました。
「それに、いきおいもつけないと」
タンテも言います。
「ぼく、やってるんだけど……」
ルーが不安そうに言いました。
「もっと手を上にあげてみたらどうだね?」
オンケルが言いました。
「それだけじゃない。スピードをつけて、さっきより早くうちおろすんだ」
ブルーダーも言いました。

「わかった。上にあげて、もっと早くするんだね」
ルーはみんなが言ったとおりにしてみました。すると、ヒュンと少しだけ音がしました。
「わあ! ほんとだ。できた!」
ルーは、とてもよろこんで、しっぽをなんどもふりました。そのたびに、アリたちがにげ、ユンクがはしゃいでかけ回ります。
「すごいよ、ルー。じょうずにできるね」
子犬はしっぽをふって言いました。

「ルー、ただ、しっぽをふり回してても、おもしろくないでしょ?」
シュベスターがにっと笑って言いました。
「どうせなら、おにごっこしましょ? そのしっぽでたたかれたらまけってのはどう?」
「おにごっこ?」
ルーがききます。
「そうよ。そのしっぽをふって、だれかにあてるの。そして、次からは、あてられたものがおにになるのよ。どう?」
「うん。おもしろそう! ぼく、やってみたい」
ルーは笑って言いました。

「でも、ちょっとまって」
タンテが言いました。
「それってあぶなくないかしら?」
「あたったら痛いかもしれないよ」
ユンクも言います。
「それに、しっぽをふり回すなんてやばんじゃないかね?」
オンケルがもっともらしく言いました。
「ルーにはむずかしいかもしれないわね」
メートヒェンも心配になりました。

「ぼく、できるよ!」
ルーが言います。
「そうよ。だから、早くやりましょ?」
シュベスターがイライラと言いました。
「でも、ルーはまだ小さいのよ。それに、みんなのようにうまく走れないし……」
メートヒェンが言いました。
「なら、ルールをきめればいいさ」
ブルーダーが言いました。
「ルール?」
ユンクがききます。

「たとえば、にげるはんいをきめるんだ。その中だけでなら、短いしっぽでもあたりやすくなるぞ」
トカゲがギョロギョロした目でシュベスターを見ました。
「何よ? わたしのほっそりとした長いしっぽが短いですって?」
ネコがギンとトカゲをにらみつけました。けれど、ブルーダーはすまして言いました。
「ルーがもつには短いっていみだよ。頭わるいな、おまえ」
「何ですって?」
トカゲとネコがにらみあっていると、
「ケンカはだめよ、ふたりとも」
タンテがとめます。

「そうか。はんいをきめるか……。それはよいアイデアかもしれないな」
オンケルが少しかんがえてから言いました。
「それなら、ぼくにもできるね」
ルーがうれしそうに言いました。
「そうね。それじゃあ、さっそく線をひきましょう」
メートヒェンが言うと、タンテとユンクがみんなのまわりをかけていきます。
グルグル ぐるぐる たったった……
回っていると、風がおきて、草がなびき、みんなのまわりに大きなまるい線ができました。
「いい? みんな、この線から出たら負けよ」
シュベスターが言いました。
「それに、ぼくのしっぽにあたったら負けだね?」
ルーもうれしそうに言いました。みんな笑ってうなずきました。
「それじゃ、スタート!」

ルーが笑いながらしっぽをふります。
「ほうら、まてまて! あてちゃうよ」
草の中でにげ回るぬいぐるみたちを追って、ルーは元気に走ります。
「こっちよ、ルー」
メートヒェンがピョンピョンとびはねて言いました。
「うふふ。そうかんたんにはあてられないわよ」
シュベスターがすばしっこく動いて言いました。
「ボク、すっごく早く走れるんだよ」
ユンクも言います。
「あら、それならわたしだって負けないことよ」
タンテもめずらしく強気の発言をしています。

「ハハ。こうしてりゃ、らくちんだ」
ブルーダーがキリンのしっぽにぶらさがって言いました。
「ちょっと、そんなのずるいわよ」
シュベスターが言いました。
「何だよ。にげる時は自分の足でなんてルールはなかったぞ」
ブルーダーが言いかえします。
「そうだよ。そんなのどっちでもかまわない。ぼくのしっぽにあたったら負けだからね」
そう言うとまた、ルーがみんなを追いかけます。
「きゃはは。まてまて!」
ルーはとっても楽しそうです。それを見て、みんなも楽しくなりました。

「アハ。こんどこそ」
ルーがはしゃいでしっぽをふります。でも、いきおいをつけすぎて、ころんでしまいました。
「ルー! だいじょうぶ?」
メートヒェンがあわてて近くにやってきました。すると、
「えーい!」
ルーがしっぽをふりました。ぱしっとしっぽがウサギにあたります。
「あん! ルーってばずるーい!」
ウサギがみをよじって言いました。でも、ルーはぱっとおきあがって言いました。
「はい。メートヒェンの負け!」
「あーん」
とメートヒェンが泣きました。

「ハハハ。体のでかいやつはふりだよな」
ブルーダーがタンテのしっぽにぶらさがったまま言いました。
「あーら、そうかしら?」
シュベスターがブルーダーのしっぽをひっぱりました。すると、プチッと音がして、トカゲのしっぽがとれてしまいました。
「あっ!おれのしっぽ……」
「みんな、なかよくしないといけないよ」
とつぜん、上の方から声がしました。
「あ! オンケルだ」
ルーが空を見上げて言いました。クラゲはプカプカと空にうかんでいたのです。

「ずるいぞ、オンケル」
ブルーダーが言いました。
「そうよ。空に浮かぶなんてインチキだわ」
メートヒェンも言いました。
「しかたないじゃないか。わたしには足がないんだから……」
オンケルが、ヒラヒラと飛びながら言いました。
「ほんとなの?」
ユンクが下から上を見上げます。
「それじゃあ、このちびっこいのは何なのよ?」
シュベスターがじゃれつきます。
「うはは、やめろ。くすぐったいじゃないか」
オンケルが、体をちぢませたり、ひらかせたりしながら落ちてきました。

「わあ! おもしろそう! ぼくもやる」
ルーは、もっていたしっぽを放りなげると、クラゲをつかまえてくすぐりました。
「いいぞ! やっちゃえ!」
ブルーダーがはやしたてます。
「そうよ! やっちゃえ! ニャかしちゃえ!」
シュベスターもこうふんして言いました。
「ボク、おさえておいてあげるね」
ユンクもしっぽをパタパタさせて言いました。
「ぎゃはは。おさえつけるなってば、こら……」
オンケルがくねくねと動くので、ルーはますますよろこびました。
「きゃあ! すごーい! おもしろいの! もっとやって! もっと!」
ルーがさけびます。

「あらまあ、ちょっとこうふんしすぎよ、ルー」
タンテが心配そうにうろうろします。
「ルー! そこだ! とどめだ! やっちまえ!」
メートヒェンがさけびます。
「え?」
その声にみんながふりかえります。ウサギは少しはずかしそうに、ポッとほっぺをピンクにそめました。
「あむっ!」
と、ルーがクラゲにかみつきました。
「ギャッ!」
と、オンケルがひめいをあげます。
「いたたた。こりゃ、まいった。こうさんだ」
オンケルが言いました。でも、こうふんがおさまらないルーは、クラゲの体をぎゅっともったままかみついて放しません。
「ルー、たのむよ。どうかかんべんしてくれ〜」

「だめよ、ルー。早くはなしなさい」
メートヒェンが言いました。
「んーん」
それでもルーは、はなしません。
「悪い子ね、ルー。おしりをペンペンたたいちゃうわよ」
シュベスターが言いました。
「おまえが言うなよ。けしかけたくせに……」
ブルーダーが言いました。
「あら、みんなだって言ったじゃないの」
ネコは、すました顔で言いました。

「ボク、ちょっぴり言いすぎちゃったかな?」
ユンクがしゅんとしっぽをたらして言いました。
「そうね。でも、今はそんなことを言ってる場合じゃないでしょ?」
タンテがおろおろと言いました。ルーにかまれたオンケルがちぎれそうになっていたからです。
「よし。こうなったらおくの手よ」
メートヒェンは、ルーのわきの下に手をつっこむと、いきなりコチョコチョとくすぐりました。
「うぷっ」
ルーがちょっぴり口をあけました。

「いいぞ。もう少しだ」
ブルーダーがおうえんしました。
「がんばれ! ルー」
ユンクも負けずに言いました。
「それって変よ」
ネコはユンクをちらとよこ目で見ました。
「そんなこと、どうでもいいから、早く何とかしてくれ〜」
オンケルがふにゃりとした声で言いました。
「いいわ。もう少しよ」
メートヒェンとタンテが二人がかりでくすぐります。

「きゃはは。やめてよ。くすぐったーい」
ついに、ルーはオンケルをはなして笑いころげました。
「ふう。やれやれ、たすかった」
クラゲは、くたりとして地面におりました。
「もうっ。ほんとにいけない子ね。いたずらルーには、しっぽのムチでぺしっとおしおきしちゃうわよ」
シュベスターが言うと、トカゲが、そんなネコのおしりをじっと見つめて言いました。
「そういや、おまえのしっぽはどこいった?」
「え?」
ネコはあわててあたりを見ました。けれど、それはどこにもありません。
「にゃーん! うそ? しっぽがにゃくなってるゥ」

「何だ。またなくしたのか?」
ブルーダーが言いました。
「わたしのせいじゃないわよ」
シュベスターが怒って言いました。
「ボク、知ってるよ。さっき、ルーがもってた」
ユンクがとくいそうに、しっぽをパタパタふりました。
「それは、みんな知っていることなんだが……」
オンケルが、おちついた声で言いました。

「ルー、しっぽをどこに放しちゃったの?」
メートヒェンがききました。
「えーとね、さっきはたしかにもってたの」
ルーが言います。
「それで? そのあとどうしたの?」
タンテが、やさしくうながします。
「ぼく、知らないの。でも、しっぽさんもきっと、どこかにいって遊びたくなっちゃったんだよ」
ルーは首をかしげて、少し考えながら言いました。
「うーん。それは困ったわね」
メートヒェンが辺りを見回して言いました。

「いったい、どこに行っちゃったのかしら?」
タンテもいっしょにさがします。
「まいごのまいごのしっぽさーん! いたらおへんじしてくださーい!」
ユンクがキンキンさけびます。
「もうっ! 耳もとできゃんきゃん言わないでよ。そんなんで出てくるくらいなら、だれも苦労しないわよ!」
シュベスターがプンプン怒って言いました。
「まずいぞ。早く見つけないと、夕方になってしまう」
オンケルがあせってパタパタしました。
「ぼくもおてつだいする!」
ルーはそう言うと、いきなりかけだそうとしました。ところが、

「あーっ!」
足もとにいたブルーダーをふみつけそうになってあわててとまろうとしました。けれども、いきおいがついていたのでとまれません。バランスをくずしてしりもちをついてしまいました。
「あーん! いたいよ! おしりに何かささったあ!」
ルーがさけびました。
「ささったって何が?」
近くにいたメートヒェンがおどろいてききました。
「いたいよ、いたいよ! エーン」
ルーはわんわん泣きました。みんなはおろおろとルーのまわりに集まってきました。

「ルー、ちょっとおしりを見せてごらんなさい?」
タンテが言います。
「だめだよ。だって、ぼく、これって一人じゃぬげないの」
ルーがもじもじと言いました。
「ぬげないって?」
ユンクがふしぎそうに、ルーの顔をのぞきます。
「だって、くっついてるんだもん」
ルーがおしりをふって言いました。

「ははーん。それってさあ、もしかして……」
ブルーダーが言いかけましたが、こほんと一つせきばらいをしてやめました。
「いやだ! ルーってば、まだおむつなんかしているの?」
ネコのシュベスターが大きな声で言いました。ルーはウサギのように赤い目をしてじっと下を見ています。

「シュベスター! 何もそんな大声で言わなくてもいいじゃないか」
トカゲがもんくを言いました。
「あら、わたしはほんとのことを言っただけよ。何が悪いの?」
シュベスターもはんろんします。
「わかってないな、アホネコ。いくらルーが小さくたって、男のプライドってもんがあるだろ?」
トカゲがじりじりとせまります。
「何ですって?」
ネコがギンとにらんで、つめを出します。

「まあまあ。ルーはまだ赤ちゃんなんだからしかたないのよ」
メートヒェンが二人の間にわってはいります。でも、赤ちゃんと言われたので、ルーはまた悲しくなりました。それで、またしくしく泣き出してしまいました。
「あー、また泣かした。バカウサギ。こんどはおまえのせいだぞ」
ブルーダーがメートヒェンをにらみます。けれど、ウサギはふんとそっぽお向いて言いました。
「そんなことより、ルー、おしりが痛かったんでしょう?」
「うん。そうなの」
ルーがこっくりうなずきます。

「何もおしりをまる出しにしなくてもいいんだよ、ルー。ちょっとおしりをもち上げてごらん?」
オンケルが言います。
「わかった。こう?」
ルーがよつんばいになっておしりを上げると、そこに何とぺったりはりついているものがありました。

「にゃん! わたしのしっぽ!」
シュベスターがさけびます。
「うるさいな! 大声出すなよ」
ブルーダーがにらみます。
「そうだよ。お耳の中がキンキンしちゃう」
子犬がきゃんきゃん言いました。
「おまえの声の方が、よほど耳にこたえるよ」
オンケルがおだやかに言いました。

「そうね。お話はおちついて、もっとしずかにしましょうね」
タンテがもっともらしく注意します。
「そんなことより、しっぽよ。わたしのしっぽを返してもらうわ」
シュベスターはしゅっと前足をのばすと、ルーのおしりからしっぽをはがしてとりました。
「やれやれ。これで、めでたしめでたしだな」
ブルーダーが言いました。
「何がめでたしめでたしよ。このバカトカゲ!」
ねこがおこって言いました。
「何がバカだよ」
トカゲももんくを言いました。

「このまんまじゃ、しっぽは切れちゃったままなのよ」
ねこが悲しそうな顔をします。
「そうよ。だから、早くママにチクチクぬってもらわないと……」
メートヒェンが言いました。
「いやよ!」
ねこがだだをこねました。
「何言ってんだよ。ぬってもらわなきゃくっつかないだろ?」
トカゲが言います。
「ぜったいにいやよ! ぬったらきずができるもん。それに、針をさすなんて、とっても痛そう」
「そうだよ。ぼくのおしりだって、とっても痛かったもの」
ルーが思い出したようになみだをこぼしました。

「ルー、そんなに痛いの?」
タンテが心配そうに顔をのぞきます。
「すごく痛いよ。ひりひりするの」
「バカねこがひっかいたんじゃないのか?」
トカゲの言葉に、シュベスターがおこって言い返します。
「そんなドジじゃないわよ。そんなに言うなら、ルー、おしりを出して見せなさい」
ねこがぷんぷんおこって言いました。
「えーっ? そんなのいやだよ」
ルーは、はいはいして逃げました。

「まちなさい!」
ねこがあとをおいかけます。
「ルー、あぶないわよ」
メートヒェンがルーをつかまえて飛びました。そのルーの足をつかもうとしたシュベスターんのつめが、おむつにひっかかってしまいました。
「あーっ!」

シュベスターはそのまま空中にもち上げられてじたばたしました。
「あーん、はなしてよ! おしりがとれちゃう!」
ルーが叫びます。
「わたしの爪だって折れちゃう!」
シュベスターもどなります。

「おい、二人ともおちつけよ。爪もおしりも、そうかんたんにとれやしないよ」
ブルーダーが言いました。
「うそ! きみのしっぽだってかんたんにとれるじゃないか」
ルーが言うと、みんながなるほどとうなずきました。
「そのとおり! ルーは頭がいいね」
ユンクがしっぽをふってほめました。
「それとは少しちがわない?」
タンテが首をかしげます。
「そうだ。トカゲのしっぽとルーのおしりじゃ、ぜんぜんちがうだろう」
オンケルも言います。

「そんなことより、早く何とかしなさいよ!」
シュベスターがせかします。
「よし! おれが何とかはがしてみる」
そう言うと、トカゲがネコをつかみました。でも、それではびくともしないので、ブルーダーは、おうえんをたのみました。
「おい、ユンク、おれをひっぱれ!」
「わかった。ボク、がんばる!」
ユンクがそのしっぽにつかまります。

「おっと。また、とれるといけない」
オンケルがトカゲの体をつつみ、ささえてくれました。
「でも、それじゃ、すべりおちてしまうわ」
タンテもいそいでささえます。
「うーん。何だかすごく重たいわ。このまま風にはこんでもらっちゃおーっと」
メートヒェンが言いました。

そして、みんなはルーのお部屋にもどってきました。
「ふーっ。やれやれ」
オンケルとタンテがほっとためいきをつきました。

そこへ、とんとんとかいだんを上ってママがきました。
「ルー、おむつをかえましょうね」
「うん」
ルーはおしりを出すと言いました。
「ぼくね、もうしっぽはいらないの」
「そうなの?」
ママがききます。
「うん。だから、シュベスターのしっぽをなおしてあげて」
見ると、ネコがむっとした顔でとれたしっぽをかかえていました。
「ええ、もちろんよ」

ママは上手にしっぽをなおしてくれました。でも、やっぱり少しぬい目が見えてしまうので、ママはそこにリボンをむすんでくれました。
「ありがとう」
それは、とってもかわいくておしゃれです。みんながそれを見て、うらやましがりました。
「ま、とうぜんだけどね」
シュベスターが笑うと、ルーもうれしくなりました。

(おわり)