VERNIERバーニア
Treasure Ⅱ サラの憂鬱

Part Ⅰ


 「ごらん。無数の星が瞬いている。まるで、この愛すべき船、キッシングラバー号に乗って宇宙に旅立つ君達を歓迎しているかのようにね」
メインスクリーンに広がった雄大な宇宙を見て彼が言った。
「本当に……ロマンティックな光景ですわ」
彼から見て斜め左前の席に座るリサがうっとりと言った。
「そうだろう。さあ、あの宝石のどれが欲しい? 君のために取ってきてあげるよ」
さっとリサの隣に行って跪くと、そのウエストを抱えるようにして彼が言った。
「愛しのくびれちゃんのために……」
「ちょっと待て」
と、彼の言葉を遮ったのはサラだった。
「確かに星はたくさんあるが、宇宙空間では瞬かない。星が瞬いて見えるのは、大気を通して見た時だけだ」
彼女は右隣の主操縦席に座っている。彼女の手は操縦桿に置かれていたが、その胸もまた少し出っ張った桿に触れていた。

「そいや、全然瞬いてないね」
動力席のロリも後ろから身を乗り出して言った。
「そう。星が瞬くという現象は大気圏を通して見た時に起こる光の屈折によって……」
「あー、お胸ちゃんってば、そんなの常識。少しは空気読んでよ」
彼が言った。
「何の空気だ? くだらねえ」
右後ろからふてくされたようにダナが言う。
「けっ! 常識だってか? おれ、そんなこと知んなかったし」
不満そうに口を尖らせてロリがぶつくさ文句を言った。

「それより、ちゃんと席に着いていろ。少し磁気が強まっている。揺れるかもしれない」
レーダーを見ながらサラが言った。
「へ? 宇宙でもガタつくことってあんだ。それってこの船がオンボロだから? それとも道がちゃんと舗装されてないとか、どっち?」
ロリが訊いた。
「どっちもだ」
ダナが投げやりに言うと、サラがこほんと咳払いして言う。
「船の塗装のセンスに関しては問題あるが、機能的には動いているのでオンボロでもないだろう。それに宇宙では船の通る航路は一応定められてはいるが、特に舗装とかの処置を施す必要はない」
「まあ、サラさんって博学ですのね」
リサの言葉にダナが呆れる。
「それくらいのことはガキだって知ってる。つまり常識ってやつだ」
「あっはあ。出たよ、常識……」
ロリがそっぽを向いて言う。

「そんなに拗ねないで、太腿ちゃん。ほら、僕の常識を分けてあげるからさ」
いつの間にか戻ってきた彼が彼女の腿に張り付いて言う。
「いんや、そういうの非常識って言うんだぜ」
彼を引き剥がすと右の方へ転がして言う。と、男はそのままレーダー側の席に寄るとダナの背中に腕を伸ばした。が、タイミング悪く船が揺れて、彼は補助椅子のサイドにぶつかった。
「酷いなあ、お胸ちゃん。揺れるなら揺れるって言ってよ」
彼は文句を言ったが、サラは済まして言い返した。
「健忘症か? さっき揺れるかもしれないと忠告した筈だ」
彼女は微妙に揺れ続けている船体を保とうと懸命に操作していた。それを見て、彼がおおっと声を上げて近づいてきた。そして、サラの左側にきてしゃがむといきなりその胸に触れた。

「何をする!」
サラが驚いて叫ぶ。
「お胸ちゃんって胸大きいから操縦桿につかえて邪魔でしょう? 僕、震えないようにちゃんと抑えていてあげるね」
男はぎゅっと彼女の胸を包むように手のひらを当てた。
「あれれ? 君の胸大きいから僕のちっちゃなおててじゃ掴みきれなーい」
と、頬を近づける。
「やめろ!」
サラが彼の両手首を掴んで喚く。
「あぎゃりゃ? 両手放しちゃった。やべえよ。危ないから手放し運転すんじゃねえって前に兄貴が言ってたぞ」
ロリが焦って喚く。
「おいおい、そいつは自転車とかの話だろ?」
ダナが呆れたように横目で覗く。
「いんや。車ん時もちゃんと言ってたし」
ロリが反論する。
「でも、これは宇宙船ですわ」
リサがおっとりと言う。
「いや、宇宙船だからって危ないさ。特に今は手動で回避するモードになってたんだ」
慌てて操縦桿を握ろうとするサラ。再び船がガクンと揺れた。しかし、男はぎゅっと胸に両手を当てて離れようとしない。

「心配ないよ。この船は最新のコンピュータシステムによって制御されてるんだ。たとえ操縦者が未熟でも、よそ見運転や居眠り運転してたとしても、安全に航行するように計算されてるんだ」
男は得意そうに説明した。
「本当か?」
サラが少しほっとしたように言った。
「どんなシステムだ? 信じられるか、そんなもん」
既に一度緊急着陸で酷い目に遭っているダナが疑わしそうに睨みつける。
「ほんとだよ。あの時は、まだ余裕があったから必要がなかったんだ」
「余裕だと? なら、どんな時に必要になるんだ?」
不機嫌そうにダナが訊く。
「そう。たとえば、僕達が相当の危機に遇した時とか……」
すると、急にギギギと船が傾いた。さっきまで映っていたメインスクリーンの星は消えて、そこに記号や光点が割り込んでいた。

「なあ、何か相当揺れてっけど、今がその危険な時ってんじゃねーの?」
ロリが訊いた。
「そうですわね。随分揺れていると思いますわ」
と、リサが振り向く。
「だろ?」
ロリは銀色の物を放っては取り、また放っては手のひらで受け止めている。
「ロリさん、それは何ですの?」
興味を持ったらしく、リサが訊いた。
「ああ、これ。ここにささってたんだけどさ、回してみたら抜けたんよ。ほら、こっちにも……」
長いのやら短いのやらのボルトを見せてロリが言った。

「おい! それってもしかして大事な部品なんじゃ……」
それを見たサラが驚いて叫ぶ。
「ほんとだ。どうして抜けたのかな? しっかり止まっていた筈なんだけど……」
彼も不思議そうな顔をした。
「何だか知んないけどさ。外れたんよ。おれって天才だからさ。このロリ様の手にかかっちゃ、ばらせないもんはねーよ。これでもおれ、あの街じゃ『ばらし屋ロリ』って言われてたんだ」
「ばらし屋か……」
ダナがぼそりと呟いた。その瞳の向こうには漆黒の闇が広がっている。
「いいから早く元に戻せ! 船が分解したらどうするんだ?」
サラが怒鳴る。

「あはは。大丈夫だよ。このキッシングラバー号はそんなにやわじゃない。たかがボルトの1本や2本抜けたところで……」
男は言った。が、途端に船がぎしぎしと軋み始めた。明らかに安定が損なわれてきている。
「1本や2本じゃねえよ」
ロリが袋からどさっと何かの部品やボルトを出した。その数はざっと10本以上はある。
「どうだ? すげえだろ?」
さすがにあんぐりと口を開けた男がさっと動力制御ボックスに入る。
「ちょっとどいて」
彼は急いでロリをどかすと、すべての部品を素早くはめた。

「ふう。もう少しで圧力ゲージが下がるところだった。でも、大丈夫。僕がいるからには君の可愛いいたずらも愛すべき要素。ああ、僕のことがそれほどまでに愛しいならもっと素直にくればいいのに……。君の愛を受け入れる準備はいつでも整っているから……」
彼女のむっちりとした太腿を抱いて男は言った。
「うぎゃ! やめてよ! くすぐったい!」
暴れるロリを押さえつけて更に顔をすりつけようとしていた彼の頭にばんっと衝撃が走った。
「いたた。何するの?」
後頭部を抑えて彼が振り向く。と、サラが大きな緑色のバッグを持って睨んでいた。
「このセクハラ男め!」
「酷いよ、お胸ちゃん。バッグでぶつなんて……結構痛いよ、これ……一体何が入ってるの?」
「すみません。それ、わたしのです」
リサが言った。
「ふん。痛いくらいじゃなきゃ効かないだろう」
サラがぷりぷりと怒りながら言う。
「大体何様のつもりだ? 私の……いや、女の大事な部分を弄びやがって……」
怒り心頭の彼女を無視して彼はバッグを開けた。

「あー、こんなのが入ってたのか。痛い訳だよ」
と、金の飾りが付いた金属性の輪を取り出す。
「ああ、それ、ティアラですわ。ドレスアップした時などにいいかと思って……」
「何だか王冠みたいだね。どう? 似合う?」
彼はそれを自分の頭に乗せて言った。
「まあ、素敵ですわ。まるで王子様みたい……」
リサはうっとりと言ったが、サラはすっと目を細めて言った。
「緊箍圏みたいだな」
サラが言った。
「キンコンカン……?」
ロリが首を傾げる。
「緊箍児、もしくは金剛圏ともいう」

「神話だろ? その昔、地球には賢い猿がいましたってさ」
男が言った。
「そう。それは桁外れに暴れん坊で妖力を使うという」
「で、美人のおっしょさんを守ってパラダイスに行くんだ!」
と、いきなりダナに抱きつこうとする彼に向けてサラが呪文を唱えた。
「このお調子者の猿めを戒めるために天はこの緊箍圏を下さったのだ。ここにその戒めの力を……」
「ううっ……!」
彼は頭を抑えて苦痛に顔を歪め、ダナの上に倒れ掛かった。
「おい……」
ダナがそれをどかそうと揺するが、男は目を閉じたきりびくともしない。

「まさか、ほんとに効いたのか……?」
半信半疑で身を乗り出すサラ。しばし沈黙が続く。
「まさか……」
サラが呆然と呟く。
「なーんちって……」
と、いきなり身を起こした彼がにんまりと笑う。
「驚いた。もしや私に人知れぬ力が宿ったのかと思って焦ったぞ」
「やだなあ。お胸ちゃんってば、ほんとに素直過ぎるんだからあ」
彼が投げキッスを飛ばすと彼女は慌てて身を捩ってかわす。
「胸の姉ちゃんって結構単純なのな」
ロリが面白がって覗く。
「お可愛いらしいですわ」
リサが言うとさすがにサラも苦笑するしかなかった。

「貴様……!」
と、いきなりダナが怒鳴った。どさくさに紛れて男の手がバックシートと彼女との間に滑り込み、その尻にタッチしていたからだ。
「うふふ。成功! おしりちゃんのおしりっておっきいからシートにぴったりはまっててなかなか僕の腕じゃ入らないんだもの」
とへらへら笑っている彼。
「貴様、ばらすぞ!」
ダナの言葉にロリが反発する。
「駄目だよ。それっておれの専売特許」
「黙りな! このチビ!」
怒鳴られて思わず首を竦めるロリ。淡いグリーンのレーダーに光点が灯る。それがすっと流れる立体スクリーン上を移動していた。その光点をじっと見つめてダナが言った。

「あたしゃ、これまで人間を何人もばらしてきたんだ」
ダナが低い声で呟く。
「まあ、人間をおばらしになったんですの? すごいですわ」
リサが何やらとんちんかんなことを口にした。
「本当なのか?」
サラが驚いて訊く。
「ああ。だから、てめえらも口の利き方にゃ気をつけるんだな」
一瞬、しんと静まり返るコクピット。中央のスクリーンはただ闇の宇宙を映している。

「あっはー。おしりちゃんのおしりってあったかだあ」
彼は懲りずにまたシートの間に手を突っ込んでいた。
「貴様……! 本気で殺すぞ!」
ダナが凄む。
「なら、殺ってごらんよ」
男が言った。
「何……!」
「君には出来ない」
じっと彼女の目を見つめて言う彼。
「そんなこと……」
否定しようとする彼女を軽く手で制して男は言った。

「ここに集っている者は皆訳ありだ。けどね、心まで汚れちゃいない。ねえ、知ってる?少しくらい歪に育った方がね、果実は甘くなるんだよ」
彼が皆を見回して言った。
「個性を潰す教育は従順な羊を育てるための虚偽だ。僕はずっと原石を探していた。人も物も未だ人間の手に触れていない未来を作るために……。どう? 僕と一緒に理想の世界を探しに行かないか?」
彼は補助椅子のバックシートにもたれ、斜に構えて彼女らを見た。
「まあ、素敵ですわ」
リサがうっとりと見つめ、
「面白そうだな。何かよくわかんねえけど……」
ロリがペロッと舌を出す。
「一応、理は通っている」
サラが納得する。
「だからさ、おいでよ。甘くて美味しい果実ちゃん達……。塞がらない傷は僕がなめなめして治してあげちゃう」
と、いきなりダナに抱きつく。その首根っこを掴んで彼女は言った。
「こいつを宇宙のダストシュートに捨てて来い」
「そんなあ。宇宙なんて冷たいよ。僕、風邪ひいちゃうもん」
「安心しろ。寒いとか暑いとか感じる前に意識がぶっ飛ぶ」

「おしりちゃんと一緒なら考えてもいいけど……」
「断る。あたしにはまだやることがあるんだ」
「なら、僕だって、おしりちゃんと仲良くして、お胸ちゃんの胸に抱かれ、くびれちゃんを抱っこしながら、太腿ちゃんの腿で眠るのが夢なんだ」
「ほざけ! この分裂病の変態野郎が!」
ダナが怒って前方へ投げ飛ばす。
「あー。おしりちゃんがいじわるするの。君のお胸で慰めて」
むにゅっと唇を突き出して接近する彼の頬に平手打ちをくらわせてサラが言った。
「まったく何て奴だ。助けてもらったことには感謝するが、あとの面倒は自分でみる。なるべく至近の惑星で降ろさせてもらう」
「あたしもそうさせてもらう。こんな奴と一緒にいたら頭がおかしくなるからな」
ダナが言った。

「ふふふ。残念でした。この船からは降りられないよ。これは特別寝台快速なんだ。僕と君達のためのね」
不敵に笑って彼が言う。
「何だって?」
サラが焦ってコンピュータをチェックした。
「騙されるな! そんなことある筈ないだろう。こいつのでまかせに決まってる。そら、どけ!」
彼を突き飛ばしてダナがレーダーをスクリーンに投影した。
「見て! あれっておしりちゃんのおしりみたい!」
くるくる動く光点を見て彼が言った。
「やっぱこいつを殺った方が手っ取り早いぜ」
ダナがさっきのティアラを持って構えた。
「やるならちょっと腰の辺りをお願い。気持ちいいから……」
彼の言葉にダナがティアラを振り下ろす。それでも彼はうれしそうに笑っている。

「やべえ……。こいつ、ほんまもんのMだったんだ」
ロリが呟く。
「え? M? そんなこと……。わたしが見たところ、Sサイズではないでしょうか? 殿方にしてはちょっとお小さい感じですわ」
リサがぽっと頬を赤らめて言った。
「それはないだろ、くびれちゃん。こう見えても僕だって下半身は鍛えてるんだよ」
彼が嘆かわしげに言う。
「いいからこいつを押さえつけろ! 私刑にしてやる」
ダナが言うと皆が彼の腕や足を押さえつけて、仰向けに引っくり返した。が、彼はまだ懲りずに笑っている。
「あっはん。駄目だよ、そんなとこ触っちゃ……。うれし過ぎるじゃないか」
彼が言った。
「うへっ! やっぱ変態!」
ロリが言った。
「人間が変体するなんてとても興味がありますわ」
リサが言って押さえ付けていた手を放した。

「おお、まるで天国だ。愛しの王女達よ、みんなまとめてここにおいで」
彼はロリの太腿に頭を乗せ、リサの腰に腕を回す。
「こら! ちゃんと押さえてろって言ったろうが」
ダナが言った。
「大丈夫だよ。僕は何処にも逃げたりしないから……さあ、時間はたっぷりあるんだ。このままパラダイスへ出発だ」
彼の言葉に皆が一斉に噛み付こうとした。と、その時、コクピットに電子音が響いた。

「何だ? 緊急通信が入ってるぞ」
サラが回線を開いた。メインスクリーンに鯰髭の男が映った。その鯰は襟に階級章を付けていた。
「キッシングラバー号だな? 私は銀河系連合軍情報部4科のアキレス少佐だ。船長バーニア及び乗組員全員を逮捕する」
軍人鯰が言った。
「どうしてですかあ? 僕達、善良過ぎちゃうほどの小市民なんですけどぉ……」
彼がのほほんとした口調で言う。
「重罪だ! 文書偽造並びに器物損壊、窃盗、殺人、強盗、傷害、殺人未遂、犯人隠匿、暴力行為……」
罪名はまだ続いていたが彼は退屈そうに欠伸して言う。

「お胸ちゃん、もっとこっちへ寄って、そう、あと15センチ左へ」
「こうか?」
彼女はその意味がわからなかったが言われるまま彼の方へ接近した。
「そう。いいよ。おしりちゃんも少し右に」
そこでぐいと上半身を起こして正面を向く。そして腕にはめたリモコンでカメラの向きを変えて微調整した。
「よし。カメラアングルもバッチリだ」
「一体何すんだ?」
ロリもリサも彼の腕に引き寄せられて顔を見合わせる。
「おい、アキレス腱。そんな原稿見てないで、こっちを見たらどうだい?」
彼の言葉にアキレスがカメラを凝視する。

「き、貴様がバーニアか?」
微かに語尾が震えている。しかし、恐怖からではない。それは……。
「ハハハ。どうだ? 羨ましいだろう」
彼は両手両足に美女を従え、怪しい格好でコクピットに寝そべっていた。
「き、貴様……何て破廉恥な……!」
アキレスが上ずった声を出す。さらに彼はリサとロリの頭を抱え自分の頬に唇を触れさせた。アキレスの頬が紅潮する。
「ふふふ。羨ましいよな? だが、おまえにはなし得ないことさ。科学省の大臣と手を結び、有望な科学者に濡れ衣を着せ、失墜させた罪は重いぞ」
彼の操作でカメラが微妙に角度を変え、別の映像を送った。

「サラ バートライト……! 何故、貴様がそこに……?」
髭の男は蒼白になった。
「こ、殺せ! こいつらは特別手配犯だ。殺してしまえ!」
冷静さを失って少佐が叫ぶ。
「終わりだな」
彼は立ち上がると船に命じた。
「審判を下す。キッシングラバー号よ、奴に王の鉄槌をくらわせろ!」

――承知

頭上から声が響いた。ギギギと微かな笑い声のような音がする。そして、船はゆっくりと進路を変えた。それから、副操縦席のスコープが自動で準備され、トリガーが起き上がった。そして、スコープの焦点に十字が重なる。瞬間。メインスクリーンいっぱいに広がった斧状の白い光が真っ直ぐに飛ぶ。そして僅か30秒も経たないうちに漆黒の軍艦を斜め左右から切り裂いた。哀れ、アキレスの船は光の渦を巻いて虚空に散った。

「何だ? 今のは……」
ダナが呆然とスクリーンを見やりながら呟く。
「おまえは、知っていたのか? 私が……」
サラが言った。
「それにしても、何であいつおまえのことバーニアだって知ってたんだ?」
ロリが不思議そうに問う。
「虹色の光がとてもきれいでしたわ」
スクリーンの残像を見ながらリサが言った。
「情報はすべて書き換えてある。僕がバーニアとして生きるためにね。そして、君達の分も……。何も心配することはないんだ。すべて僕に任せておけばいい」
男が言った。この宇宙には数限りない星が存在している。そして、数限りない人間がそこにいる。その中には少々型からはみ出した変わり者の人間も存在する。バーニア、彼とその仲間達のように……。