3つのエコセーズ
―2 メルヘン―


真珠の秘密


ぼくは真珠を探したよ。
まるくて白くて艶々してる。
ぼくはどうしても欲しかった。
だから陸を探したの
一生懸命探したよ。
なのに真珠は見つからない。
白薔薇、白蝶、白ライオン。
誰に聞いてもわからない。
白いドレスに白い車、白い画用紙も白い卵も
みんな知らないって首を振る。
だけど、ぼくは諦めない。
ぼくは真珠が欲しかった。
何処にあるのか、ぼくの真珠。
銀の髪の人が教えてくれた。
あれは海にあるんだって……。
だから、ぼくは海へ行ったの。
深い深い海の底。
海の底は真っ暗で、とてもとても怖かったよ。
けれど、真珠は見つからない。
お魚に訊いてもわからない。
海老も蛸もイカさんも、みんな知らないって言うんだよ。
大きな鯨も知らないって……。
だから、ぼくは困ったの。
プカプカ浮かんだ海草に
ぼくは掴まって、お月様と話したの。
星は丸くて小さくて、まるで真珠みたいに見えるけど、小さいぼくの手では届かない。
うんと背伸びしたけど届かない。
お月様は子守唄を歌ったの。
だから、ぼくは海のオルガンを弾いてあげたよ。
そしたら、海豚さんがやって来て星達といっしょに歌ったの。
それから、ぼくを人魚姫のお城へ連れて行ってくれたんだ。
そこは何もかも美しい物で出来ていてぼくはお姫様と踊ったの。
お姫様の冠は貝と真珠で出来ていた。
だけど、ぼくは欲しがらない。
だって、それは人魚姫の物だもの。
ぼくは、ぼくだけの真珠が欲しいんだ。
海亀に乗ってお姫様にさよならをして、ぼくは魔女の家へ向かったよ。
魔女はとても怖い顔で睨んだけれど、真珠のある所を教えてくれた。
それは貝の中なんだって……。
大きな貝がそっと抱いて眠っているって……。
けれど、それは貝の宝物だから奪ってはいけないのだと魔女は言った。
なら、どうしたらいいの?
無理矢理奪って貝さんが悲しい思いをするならば、ぼくはやっぱり諦めなきゃいけない。
貝さんが泣いたら、ぼくまで悲しくなってしまうもの。
だから、ぼくはそっと陸に戻った。
お月様がまた子守唄を歌ってくれた。
だから、ぼくは、今度は陸のピアノを弾いてあげた。
星達がみんな笑って、ぼくはとてもいい気持ち。
だけど、ここが何処だかわからない。
知らない街の知らない場所に、ぼくはぽつんと立っていた。
空もお月様も同じなのに、どうしてなんだろ?
ぼくは知らない街を一人で歩いた。
そして、ぼくは君を見つけた。
君は一人で泣いていた。
瞳から溢れ出るそれは……ぼくが探していた物だった。
ぼくは彼女にキスをした。
そして一粒も溢すまいとそれを吸った。
それは、ちょっぴり海の香りがした。
「いっしょに行こう」
ぼくは彼女をそっとポケットに入れた。
彼女が少し動く度、ぼくはとてもくすぐったくて……。
ぼくは彼女をそっと取り出すと
ぼくの熱い唇で吸って、胸の中に入れてあげた。
時々、彼女が動くのでぼくはちょっぴりくすぐったい。
それがとてもうれしくて
クスクスと笑ってしまう。
ぼく達、もう離れられないね。
どんな時でも一つだね。
ぼくが弾く鍵盤の中から白い真珠が溢れ出すよ。
真珠はころころ転がって空のお月様にお話を聞かせに行った。
だから、いつもお月様の周りには星がいっぱい。
あれはみんな空の真珠。ぼくのピアノと君の涙で、この星空は出来ているんだ。
クスクスとクスクスと笑いながら……
ぼくらとこの世界をじっと見ている。