3つのエコセーズ
―2 メルヘン―
難破船
どっちへ行ったらいいんだろう?
波音ばかりが響いてる
何処を目指せばいいんだろう?
壊れたままの羅針盤
針はぐるぐる回るだけ……
心の中で空回り
知りたいことが見つからない
答えは箱に詰まってる
だけど、ぼくには探せない
潜っても潜っても
がらくたばかりのその箱に
何を望めばいいんだろう?
懐中電灯当てたって
出て来るお化けはヘラヘラ笑い
どろどろへどろの怪獣ばかり……
どっちへ行ったらいいんだろう?
闇に漂う難破船
導く光を灯せずに
灯台は枯れて行くだけ……
意味のない文字列の向こうに
真実の鍵穴が見え隠れしてる
誰もが一度はそこを通り
誰もが一度は立ち止まる
けれど、それは見えない扉
すぐに波がそれを隠す
探したいものが見つからない
薄っぺらな言葉の波で
何もかもを覆い隠そうとする
羅針盤はぼくの中
いつでもぼくの進路を示す
たとえそれが間違っていても
ぼくはぼくが進む方向へ歩く
コンピューターの波の中
溢れる情報、その海に
本当のことなんてないのかもしれない
知りたいことも何もかも……
だけどぼくは探してる
ぼくとぼくの行く先の答えを……
どっちを目指す?
お魚が右から左へ横切って行く
知りたいことも
知りたくないことも
ごちゃ混ぜにして
辿り着けないその先を掴もうとする
海はあまりに広すぎて
波はあまりに急過ぎて
知りたいことが探せない
検索窓が見つからない
捻じ曲げられた真実に
抵抗することもなく流されている
時間の波に乗せられて
人は沈黙を守る
うまく泳いで社会を紡ぐ
お魚はみんな同じ方向へ泳ぐ
でも、ぼくはうまく泳げずに
底の底まで沈んでく
だけど、それでもかまわない
だってそこにはきっとある
他の人には見えないものが
寄り道しなきゃわからない
小さな奇跡があるんだよ
きっとそこにはあるんだよ
光るお魚追い掛けて
潜って泳いで空に出た
ぼくはふうっとため息一つ
あなたは隣でため息二つ
情報の海に漂ったまま
ぼくはクリックを繰り返す
青いモニターに浮かぶ
あなたの本当が知りたくて
偽りでない心を信じたくて
ぼくはいつまでもネットサーフィンを続けている
荒れ狂う文字列をかき分け
何度も情報の海の中でもがき
流されそうになりながら
それでも、ぼくは
あなたがくれたおもちゃの帆船にしがみついてる
青いモニター、波に揺れて
辛い真実の鍵を
ぼくの心が受け入れられるようになるまで
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