3つのエコセーズ
―1 おもちゃ箱―


ぼくと卵


グーテナフト お月様
グーテナフト 草や木も
グーテナフト ウサギさん
グーテナフト リモコン付きのミニカーも
グーテナフト ままごとセットの皿達も
グーテナフト ぼくの好きな狼さん
グーテナフト グーテナフト

みんなが眠ったそのあとで、卵が1個転がった。
ころころころんと転がった。
ゆらゆらゆらりといい気持ち。
コロコロコロンと楽しそう。
細いドアの隙間から
卵はころりと出て行って、
すとすとすとんと階段下りた。
それから居間のテーブルすり抜けて、
とんとん転がり来たけれど、
ドアには鍵がかかってる。
そこで卵は考えた。
転がり転がり考えた。
玄関脇には帽子掛け。
黒いコートも掛かってる。
卵はぴょんと飛び上がり、
すとんとポッケに飛び込んだ。
ぼくのコートに飛び込んだ。
いっしょに行こうよ、夜の街。
卵は卵。ぼくはぼく。
だけどぼくらは友達で、
いつもいっしょに夢を見る。
君は何にだってなれるんだ。
お化粧すればイースターエッグに、
装甲をかぶれば手榴弾に、
ジャグリングの練習も出来れば、握力を鍛える道具にだって変身出来る。
君はただの卵なんかじゃないんだ。
世界一優秀な卵さ。
夜の闇に突然、怪獣が現れた時だって、
君の頭突き一つでやっつけた。
君は英雄。
卵の中の卵なんだ。
落としたってぶつかったって壊れない。
卵は卵。木の卵
ころころと闇の迷路を転がって、
迷子になっても大丈夫。
君を握ると安心できる。
握っているとあたたかくなるよ。
生きているからあたたかくなるよ。
だから、ぼくは雌鳥を探した。
そして、卵を抱いてるその中へそっと君を混ぜておいた。
月の光をたっぷり吸って君は一つの命になった。

グーテナフト ぼくの卵
グーテナフト 雌鳥と卵
グーテナフト お月様
ぼくの卵を見守っていてね。

それから、何日かして、そこを通りかかったら、雌鳥とひよこが楽しそうに餌を食べてた。
「生まれたんだ!」
ぼくは言った。
ぼくの卵がちゃんと生まれた。
ぼくはお月様にありがとうと言った。
そして、夜。
ぼくはちょっぴり窓を開けて言った。
「グーテナフト。お月様。
グーテンモルゲン。ぼくの卵。
グーテンターク。ぼくの夢……」