3つのエコセーズ
―2 メルヘン―


シーソー


それはガラスで出来ていた。
真っ暗闇の公園で
オーロラみたいに透けていた。
だれかがキイッとそれに乗る。
月夜の晩にそれに乗る。
けれど、それは傾いて
右が重くて上がらない。
闇の子供は困り果て、
光の子供を連れてきた。
けれど今度は反対の
左が重くて上がらない。
闇の子供が光を殺し、光の子供は闇を刺す。
そしたらシーソー怒ったの。
ガラスのそれは大きくなって
闇夜の空で回ってた。
ぐるぐるぐるぐる回ってた。
そしてそれはいつの日か
渦巻きぐるぐる銀河になって
とうとう砕けてしまったの。
かけらになったシーソーはそのまま宇宙で回ったの。
キラキラキラキラ回ってね。
それぞれ小さな星になり、
さらに砕けて粉々に……。
見えないくらい小さくなって、
やがてそれは人になったの。
そうして人はそれぞれの
心にシーソー持ってるの。
光の子供と闇の子供は
今も心の中のシーソーで
上がったり下がったりして遊んでる。
どっちが上かで競争してる。
それは永遠に終わらない。
心の中の遊園地。
危ういガラスの遊園地。
月夜の晩の公園で
ぼくは一人、シーソーに乗った。
地面に着いたままのシーソーに
悲しく映る影一つ。
だれかぼくを持ち上げて……。
鉄のシーソー冷たくて
つかんだそれも冷たくて
ぼくは君が欲しかった。
君の心が欲しかった。
朝まで待って陽が射して
すずめ鳴いても、君来ない。
オーロラの輝きをもう追えない。
君は砕けてしまったよ……。
ぼくの心臓といっしょにね……。
そして、宇宙になったんだ。
君が空で輝いてた頃、
ぼくは鉄の冷たさを抱き締めていた。
君が宇宙で笑っていると
ぼくは地べたで泣いていた。
届かない想いと
上がれないシーソー……。
いつまでもそこから動けないでいる。
「何をしてる?」
銀色の天使が来て言った。
「上がれないの」
すると天使は魔法をかけた。
上がれなかったシーソーは空の上……。
運命を抱いて
上がったり下がったりした。
星空と家並みが代わりばんこに現れて
ぼくはすっかりいい気分。
冷たい鉄もオーロラに見える。
ぼくの心のシーソーは、
今、どっちに傾いている?
ひとりぼっちはいやだから
いつもだれかを探してる。
光の君を探してる。
闇が重くなり過ぎて
奈落の底に落ちないように
光の加減が強すぎて
空を突き抜け飛ばないように
いつもバランスを保ち
心の真ん中に止めたネジが
緩まないように気をつけている。