3つのエコセーズ
―1 おもちゃ箱―
白いのと黒いの
ゲームをしたよ。
白いのと黒いの
挟んで取って引っくり返す。
白いのと黒いの
どっちがきれい?
白いのと黒いの
多い方が勝ちだよ。
白いのと黒いの
白いのが好き。
だから、ぼくはいっぱい取って
四角を全部
白丸で埋めて海にするんだ。
なのに、どうして?
あなたが置いた1個の黒が
ぼくのすべてを引っくり返す。
白いイルカは形を変えて
大きな鯨になっちゃった。
鯨はどんどん大きくなって
四角い海で大暴れ。
ザブンザブンと波を立て、
白い魚をパクパク食べた。
そして、鯨はお腹がいっぱい
大きくなって
空の上まで泳いで行った。
それから、空の丸い魚も食べて
どんどんどんどん広がって
黒い大きな夜になったの。
悲しく、寂しい夜になったの。
夜は何もかもを黒くして
寂しくないようにしようとしたの。
カラスにこうもり、黒豹も
みんな夜の仲間だよ。
夜はお月さまも仲間にしたくて、
食べようとしたの。
だけど、お月さまはやさしいから
寂しい夜と友達になってあげたの。
だから、お月さまは時々は半分白くなったり、細い三日月になったりするんだよ。
白いのと黒いの
どっちがいいかお月さまにきいたら
本当のことはわからないって言った。
夜はすごく寂しがりやだから、
ぼくは黒い髪のままでいるね。
白い鍵盤はいつだって黒い鍵盤を愛してる。
なのに、黒い鍵盤はそんな白い鍵盤の上に出たがる。
だけど、本当はとても寂しい黒い鍵盤。
いつも半音、不安な音色。
白いのがいないと落ち着かない。
あんなに大きな空だって、
黒い夜の闇ばかりだったら悲しいよ。
だから、白い星と仲良ししてる。
黒いのと白いの
ぼくの心はどっち寄り?
ぼくは、最後の一つ白いのを置いた。
鯨のお腹に白いのが三つ
ぼくの心に黒いのが一つ
そして、あなたの中にぼくが一つ
ねえ、もう一度
ゲームをしようよ。
明日、寂しくないように……。
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