3つのエコセーズ
―1 おもちゃ箱―


おもちゃの心臓


おもちゃの心臓、くまの中
トクントクンと震えてる。
ぼくの心臓、夢の中
怖い怖いと震えてる。
くまの心臓、胸の中
赤ちゃんぐっすり夢の中……。
だけど、どうして? 眠れない。
悲し過ぎて眠れない。
ぼくの中を過ぎる亡霊。
トクントクンと泣いてるよ。
すぐ脇を寂しさが通って
その隣を空しさが過ぎる……。
怖い夢がぼくを追い、
ドクンドクンと流れるよ。
ぼくは逃げるよ、ぼくの中。
心臓がトクントクンっていってるよ。
息が切れて苦しくて、
ぼくの心臓、ぼくの中
トクントクンと空回り。
愛と死とを交互に刻む。
くまの心臓、とくとくり……。
耳を当てても聞こえない。
ぼくが怒って投げつけたから?
ウサギばかりを抱っこしたから?
ぼくが嫌いと言ったから?
それで悲しくなっちゃった?
くまは黙ってぼくを見る。
悲しい瞳でぼくを見る。
ぼくは画用紙買って来て、
チョキチョキはさみで切り取った。
ハートの形に切り取った。
それから赤く色を塗り、
そっとキスして君の中
ぼくの心を君に渡すよ。
くまは笑って受け取って、
それから胸にすっぽりはめた。
おもちゃの心臓、君の中
トクントクンと動き出す。
そして、ぼくらは仲直り。
おもちゃの心臓震わせて、
ぼくらは心を語ったよ。
心はハートで出来ていて、
ハートは心臓に守られている。
空にはハートが咲いていて、
人は誰でも平等に
きれいなハートを持っている。
けれど、それが歪んだり、
汚れたりして醜くなることもある。
だから、時々注意して
汚れないように磨かないといけないの。
そうしないと、鏡のように
怖い夢を見せて、
だんだん自分が見えなくなって、
それで、ついには壊れてしまう。
寂しくなって壊れてしまうの。

ぼくの心臓、夢の中
怖い怖いと震えてる。
君の鼓動に会いたくて、
トクントクンと震えてる。
いつか会えるよ、運命に
君の心臓トクントクン
ぼくを喜びで満たしてくれる
生きた心臓を持った
人間の君。
ぼくの心臓、切り取って
愛する君にあげたなら、
悲しみも何も
感じないでいいかしら?
赤ちゃんのようにすやすやと
君の隣で眠れるかしら?
そして、ぼくらは自由になって
星の近くにだって飛んで行ける?
夢を見たよ、トクントクン。
ぼくの中にはいつだって
愛と君が流れてる。
二人の夢が出会う時、
未来は変わる。
おもちゃの心臓、トクントクン
くまの心臓、止まっても
ぼくの心臓、君の中
滅んでも終わらない愛の夢を追って
ぼくは今、君に向かって
歩き出したところ。