3つのエコセーズ
―2 メルヘン―


星祭り


ぼくは君が欲しかった。
夜空に浮かぶあの星が。
ぼくは星を捕まえに
夜の街に繰り出した。
流れる星を捕まえに
星取りあみも用意した。
けれども星は空の上
背伸びしたけど届かない。
腕を伸ばせばあみの中
星はするりと抜け落ちて
あみの中には何もない。
ぼくは上るよ、屋根の上
だけど、それでも届かない。
白い星は雪のよう
ぼくが呼んでも振り向かない。
それでも君が欲しかった。
冷たい氷のその奥に
君のほんとが見えるから……
空はキラキラ星の海
連れて行ってよ、君の空
見つからないんだ、入り口が
探せないんだ、君の手が
雲に覆われ見えないよ。
君の心が見えないよ。
黒く寂しいその川は
砕けた夢の残骸抱いて
星達が眠る夜のオアシス
あまりに心地よいその幻想は
ぼくの心を水底へ沈める。
揺らめく水面を見上げると、
そこに星が光ってた。
ぼくは宇宙を見上げたよ。
滲んだ夢は夢のよう……。

「お祭りに行こう」
荘厳に響く鐘の音
賑やかな音楽と笑い声
ぼくは星の点灯夫
一つ一つに灯を点す。
赤い星 黄色い星 青い星
そして、白く輝く1番星
壊れた夢を掬っては
蜜蝋灯して川の上
星は次々羽ばたいて
遠い空を目指してく。
空は賑やか星祭り
きらきらワルツを踊ってる。
最後に掬ったあみの中
壊れた夢が泣いていた。
それは、ぼくの夢だった。
ぼくは飛べずにかごの中
光をなくして闇の中
そしたら蜜蝋列をなし、
星の川を流れて行った。
星の明かりで照らして行った。
地上の闇に灯が灯り、
黒い川は光で満ちた。
ここはオアシス
ぼくのオアシス

「ほら、なおったよ」
彼がくれたその星は
ツリーに飾る銀の星。
でも、本当はそうじゃない。
それは、壊れたままのぼくの夢。
あなたは知らずに微笑んだ。
今日は空の星祭り
ぼくの星も間に合って
おめかししたら飛んで行けるね。
ぼくはそっと星を窓際に吊るした。
その夜、星は空で輝いた。
ぼくは星あみで夢を掬った。
窓を開けて祭りを見上げる。
ぼくの夢は羽ばたいていた。
あなたの星と踊ってた。
ララララ ララララ 楽しそう。
だけど、ぼくはここにいる。
木でできた星達が絨毯の川を流れる。
ぼくはとてもいい気分
星の川のほとりにあなたが立った。
「祭りに行かなくていいのか?」
「うん。いいんだよ」
だって、ここにはあなたがいるもの。
銀に輝くぼくの夢
ここがぼくのオアシスだから……。