12月になりました。もうすぐクリスマスがやってきます。ルーのお家でもリビングに大きなクリスマスツリーをかざりました。それから、ルーの部屋にも小さなツリーとサンタクロースの人形を置きました。でも、ルーが一番大好きだった物は、アドベントカレンダーです。クリスマスまで、毎日一つずつ小箱を開けて、中に入っている物がもらえるのです。それは甘いチョコやキャンディーだったり、小さなコマやミニカーだったり、きれいな星のかざりだったこともありました。
「おはよう、ルー」
ママが窓のカーテンを開けました。
「おはよう、ママ。クリスマスまではあと何日?」
「18日よ」
ママが教えてくれました。
「18?」
でも、その数はとても大きい数なので、ルーにはよくわかりません。でも、夜が明けたので、また一つカレンダーの小箱を開けることができるのだということはわかります。
「今日は何がもらえるの?」
「それじゃあ、開けてみましょうね」
ママが、カレンダーをとってくれました。
「どこを開けたらいいの?」
「ネコさんのいるところ」
ママが教えてくれました。
「ここだね?」
ルーはネコさんの絵を見つけてうれしそうです。丸い小さな取っ手をつまんで箱を開けると、そこには星の形のチョコレートが二つありました。それはきれいなピンクと白い色をしています。
「わあ! ぼくね、これ大好きなの」
ルーが喜びます。それを見て、ママもうれしくなりました。
「はい。一つあげる」
ルーが差し出すと、ママは言いました。
「いいのよ。ルーがお食べなさい。これは神様からのごほうびなのよ」
「神様からの?」
「そうよ。だから、感謝をしていただくのよ」
「わかった。ぼく、感謝する」
と、言って、ルーは小さな手を合わせてお祈りしました。
「ところで、ルーは、もうサンタさんにお願いする物を決めたのかしら?」
ママがききます。
「えーとね、ぼく、考えたの」
「何が欲しいの?」
「ぼくねえ、メートヒェンのお友だちが欲しいの」
「メートヒェンの?」
「だって、ぼくは時々パパやママにお外につれて行ってもらって、他の子と遊ぶこともできるけど、メートヒェンにはぼくしかいないんだもの」
「そうね。じゃあ、サンタさんにお願いしてみましょうね」
ママがやさしく言いました。
ママが部屋から出て行くとメートヒェンが言いました。
「ルーはほんとにそれでいいの?」
「何が?」
「ルーだって、他に欲しい物があるでしょう?」
「うん。でも、メートヒェンのお友だちがきたら、ぼくも遊べるもの」
ルーは笑って言いました。
「ねえ、メートヒェンはどんなお友だちにきて欲しい?」
「そうね。ルーのように可愛い子がいいわ」
「ぼくみたいに?」
ルーはとてもうれしくなりました。
「そうよ。ルーのように可愛くて、できれば、しっぽや耳にかみついたりしない子がいいわ」
そう言ってメートヒェンはくすくすと笑いました。それを聞いて、ルーは怒ってパンパンとウサギの背中を叩きました。
「痛い! やめてよ、ルー」
メートヒェンが言いました。
「だって、メートヒェンがひどいこと言うんだもの」
「ひどいこと? だって、ルーが全部やったんじゃない」
「ちがうもん!」
ルーが叫びます。
「うそつき!」
メートヒェンが言いました。
「ちがう!」
ルーは怒ってメートヒェンの耳をつかんで投げつけました。
「痛いっ! 何するのよ」
「メートヒェンなんかきらい!」
ルーが言いました。
「ほんとのこと言われて怒るなんてサイテー。いいわ。わたしだって、ルーのことなんかきらいだもん」
メートヒェンがプンとそっぽを向きました。
「いいもん。ぼく、クリスマスには、もっといい物欲しいですってサンタさんにお願いしてくるんだ。さっきのはちがうってママに言ってくる」
ルーは、ベッドから下りようとしました。でも、毛布がからんでなかなかうまくいきません。いつもなら、ママを呼ぶ時には、まくらの近くにあるベルを鳴らしました。でも、今日は自分の方から、ママの方へ行こうと思ったのです。でも、そういう簡単な動きが、ルーにはまだむずかしかったのです。
「あっ!」
どすんっ! 毛布の中でもがいているうちに、とうとうベッドから落ちてしまいました。
「あーん!」
部屋には厚いカーペットがしかれていたので、そんなに痛くはありませんでした。でも、ルーはびっくりして泣きました。
「ちょっと、ルー、だいじょうぶ?」
メートヒェンが心配してやってきました。
「来ないで!」
ルーはまだ怒っていました。
「あっちへ行って! メートヒェンなんかきらいだもん。ぼくにいじわるなこと言うメートヒェンなんかきらい! キライ! 大きらい!」
「なら、いいわ。ほんとに行っちゃうから……」
そう言うと、メートヒェンはすーっと飛んで窓から外に出て行ってしまいました。
「あっ! まって!」
ルーがあわてて叫びます。
「メートヒェン! まって! 行かないで!」
けれど、もう、そこにウサギの姿はありません。開いた窓から入ってくる風がひらひらとカーテンをゆらしています。
「あーん……。メートヒェン! ぼくのメーチェン……」
ルーは泣きながらあとを追おうとしました。けれど、どうしたことでしょう。いつもなら、メートヒェンといっしょに軽々と空を飛ぶことだってできたのに、今はまるで飛べません。体は重く、ベッドのふちにつかまってやっと立ち上がったものの、うまくその上に上がることさえできなかったのです。
「メートヒェン……」
カーペットには汽車のレールがつないであって、ベッドの上からでも、リモコンで動かすことができました。けれど、そのリモコンも奥にあってとどきません。壁では、つり下げられたハンペルマンが風にゆられて笑っています。
「バカァッ!」
ルーが叫びます。すると、ものまね鳥のオウムが、
「バカァッ」
と、おもちゃ箱の中から返しました。
「バカ……」
ルーは、カーペットの上をはいはいしておもちゃ箱に近づくとオウムをつかんで投げました。それから、箱の中のおもちゃを次々と取り出して部屋いっぱいに散らかしました。
「さみしくなんかないもん」
ルーはたくさんのおもちゃに囲まれて言いました。
「メートヒェンがいなくたって、さみしくなんかない。ぼく、平気だもん」
ルーは積み木で遊ぼうとしました。けれど、なかなか上手に積めません。次に大きなコマを見つけて回そうとしました。でも、これもうまくいきませんでした。紙の風船をふくらまそうと息をいっぱい吸い込んで、それから、ふーっと風船の口に吹き込みましたが、なぜだかちっともふくらみません。
「どうして……?」
ルーは、もっとほかにないかと箱をひっくり返してみました。鉄の車は冷たかったし、バレリーナの人形はつんとすました顔をしています。大きなボールにさわったら、ころころどんどん転がってルーからはなれて行ってしまいます。
「きっとみんな、ぼくのことがきらいなんだ……」
ルーは悲しくなりました。
「ママ、きて。メートヒェン……」
天井はとても高く、ドアはとても遠いところにありました。
「ぼくのおもちゃ……」
ルーはたくさんのおもちゃを持っていました。けれど、ルーはひとりぼっちでした。だって、だれかがいっしょにいてくれなければ、遊ぶことさえできないのですから……。
「おねがい。ぼくと遊んで……」
ルーは近くにあったピエロのお人形に話しかけました。けれど、人形はさかさまになってへらへらと笑っているだけ……。
「ねえ、おねがいだよ。だれかぼくと遊んで」
でも、そこにいた小人たちはぞろぞろとルーの前からはなれて行ってしまいました。
「まって!」
ルーははいはいして追いかけます。小人たちは積み木の間を通り、ミニカーのとなりを通って進みました。
「どこに行くの?」
ルーがあとを追ってたずねます。
「歌をさがしに」
一人の小人がこたえました。
「歌?」
「そうさ。陽気な小人は歌が好き!」
「なのに、なくしてしまったそのメロディーを」
「さがして回って森の中」
「けれども歌は見つからず」
「小さな姫も見つからず」
「今日も今日とて旅をする」
6人の小人が言いました。
「きみ、歌える?」
と、7人目の小人がききました。
「歌? えーとね、あーあーあー」
ルーは何とかいい声を出そうとがんばりました。でも、どうしたことかメロディーがちっとも思い出せません。
「あれ? ぼくもお歌忘れちゃった」
ルーが言いました。
「さがしに行こう!」
と、小人が言いました。
「取りもどしに行こう!」
別の小人も言いました。
「ぼくも行く!」
ルーもあわてて言いました。
「それじゃあ、出発進行だ!」
小人のリーダーが元気に言いました。それで、ルーと小人たちはそろって部屋の中を進みました。
「メロディーはどっちだ?」
小人の一人が言いました。
「歌はどっちだ?」
「姫はいずこに?」
小人たちはあっちへ行ったり、こっちへ来たりして動き回ります。ルーはそのたびに、横を向いたり、後ろを見たりと忙しく首を動かしました。けれどもどこにも見当たりません。赤い小さなバケツの中も、積み木の箱の中も全部見たのに見つかりません。小人の一人がバレリーナのチュチュの中をのぞこうとしてけとばされたり、木でできた汽車のレールと車輪の間をのぞこうとしたら、大きな汽笛で危ないぞと警告されたりしただけでした。
「ほんとにどこに行っちゃったんだろうねえ?」
ルーも近くにあったくずかごを引っくり返してみましたが、やっぱりそこにもありません。
「わかった。きっとあのドアの向こうに逃げてしまったんだ」
小人の一人が言いました。
「あのドアの向こうに?」
ルーが言います。
「そうだ。きっとそうにちがいない」
「行ってみよう」
「そうしよう」
小人たちは、みんなそろってうなずきました。
「でも……どうやって開けるの?」
ルーがききます。ドアの取っ手は、とっても高いところにありました。小人たちは、いっせいにルーの方を見ました。
「ぼく?」
ルーが自分を指さして言いました。小人たちがうなずきます。
「むりだよ。ここからじゃ、ぜんぜん届かないもの」
ルーはすわりこんだまま言いました。
「そんなことはないよ」
「ちょうど君の背の高さくらいだ」
「立ってごらんよ」
「そしたら届くよ」
小人たちが言いました。
「でも……」
そこには、つかまる物がありません。ルーはずるずるとおしりを動かして後ろに下がりました。
「むりだよ。だって、ここにはママがいないもの」
ルーは首を横に振りました。いつもなら、ママが支えてくれました。つかまる物だってありました。でも、ここには何もありません。
「むりだよ。ぼくね、ほんとはひとりじゃ立てないの。歩くこともできないの。ママかメートヒェンがいてくれなくちゃ……。メートヒェンがいてくれなくちゃ、ぼくはどこにも行くことができないんだ!」
ルーはしくしくと泣き出しました。
――信じたら、きっとできるわ
メートヒェンの声が聞こえたような気がしました。
「できる? ほんとうに……」
ルーが言います。
「できるよ。きっとね」
「そうだ。立ってごらんよ」
「ルーならできる」
小人たちもおうえんしてくれました。
「うん。ぼく、やってみる」
ルーは何もない壁に手をついて、足に力を入れてふんばりました。でも、ちっともうまくいきません。
「やっぱりむりだよ」
ルーが言います。
「だめだよ」
「あきらめないで」
小人たちがはげましました。
「そうだ。いすにすわっている時の方がうまくいくかもしれない」
ルーは思い出しました。いすにすわっていると、何かにつかまれば、かんたんに立ち上がることができたのです。
ルーは、あたりを見回しました。けれど、そこにいすはありません。ベッドのところには、手すりのついた階段と小さなテーブルのついたいすがありました。けれど、それは高くてひとりではのれません。ルーは近くにあった積み木の箱を見つけました。
「これにのったらどうかしら?」
ルーは手を伸ばして箱を引きよせました。それから、それをさかさまにして何とかおしりをのせようとがんばりました。そして、何度めかの時、うまいことおしりが箱の上にのりました。すると、少しひざを曲げることができました。
「やっぱりだ。これなら、うまくいくかも……」
ルーはいきおいをつけて立ち上がろうとしました。けれど、なかなかうまくいきません。何度やってみても、おしりだけすとんと前に落ちてしまうのです。
「いきおいが足りないのかな?」
ルーはもっといきおいをつけようと体をゆらしました。ところが、今度はいきおいがつきすぎて思い切り前につんのめっておでこをドアにぶつけてしまいました。
「あーん」
ルーはおどろいて泣きました。
「ルー、大じょうぶ?」
「ルー、がんばったのに……」
「それくらい痛くなんかないよ。がんばれ、ルー」
小人たちが言いました。
――きっとできると強く信じて
メートヒェンが前に言ったことを思い出しました。
「うん。ぼく、もう一度やってみる」
ルーはまた、箱の上におしりをのせるところからやり直しました。
そして、何回目のことだったでしょうか。ついに、ルーはひとりで立ち上がりました。
「わあ! できた! ぼく、ちゃんと立てたよ! でも、ほんとうかしら? これって夢じゃない? それとも、ほんとうにぼく……」
ルーもはじめはおどろいて、自分がほんとうに立っているのか信じられないと思ったのです。でも、それは夢ではありませんでした。
「すごいよ! ルー」
「おめでとう! ルー」
「えらかったね、ルー」
小人たちもみんな、よろこんでくれました。
「ありがとう。うれしいよ。ぼくは今ほんとうにひとりで立ってるんだね」
ルーはほこらしい顔をしていました。でも、ふいに体がふらつきました。
「あ……」
ルーは、あわててドアに手をつきました。すべり落ちそうになる手を必死にのばして、ドアの取っ手にしがみつきました。それで何とか体をささえることができました。
ルーは天井を見ました。それから、ゆっくりとふりかえって部屋の中を見ました。見なれた部屋なのに、どこかがちがう気がしました。
「どうしてだろ? おもちゃたちがみんな小さく見える」
その時、ルーがつかんでいたドアの取っ手が動きました。そして、キイッとドアが開きました。
「あ……」
そこは2階で、ワインレッドのカーペットがしきつめられています。そしてその向こうには、1階から吹き抜けになった空間が広がっていました。そして、そこには美しいクリスマスツリーに明かりがともってかがやいていたのです。
「わあ! 何てきれい……!」
ルーは思わず手を放し、ろうかに向かって歩きました。その美しい光をもっと近くで見たかったのです。
「ルー!」
だれかがルーのことを呼びました。ふりかえると、そこにはパパが立っていました。おしごとでずっと外国に行っていたパパが帰ってきたのです。
「ルー、おまえ、ひとりで歩けるようになったのかい?」
パパがうれしそうに言いました。
「え?」
ルーはおどろいてまわりを見ました。それはほんとうでした。ルーは、何にもつかまらずにひとりでろうかの真ん中に立っていたのです。
「ぼく……ぼく、歩けたの? ひとりでここまでこれたんだ」
「ブラボー!」
パパがルーを抱き上げて言いました。
「ルー! お祝いだ! おまえのために乾杯しよう」
パパはルーを抱きしめて何度もキスをしました。
――ルー、ほんとうによかったわね
メートヒェンの声がしました。
「メートヒェン!」
ルーが叫びます。
「パパ、ぼくが歩けるようになったのはメートヒェンのおかげなの」
ルーが言いました。
「メートヒェンがはげましてくれたから……。だから、ぼく、あきらめなかったの」
「そうか。えらいぞ」
パパはそう言ってルーの頭をなでました。
「なのに、メートヒェンはおこって出て行ってしまったの。ぼくがひどいこと言ったから……。きっとメートヒェンはもう、ぼくをきらいになっちゃったんだ……!」
そう言ってルーは泣きました。
「あら、そんなことないわよ」
メートヒェンが言いました。
「どこ? メートヒェンはどこにいるの?」
ルーは首をのばして、あたりを見ました。
「ここよ」
メートヒェンは階段を上って来るママに抱かれていたのです。
「メートヒェン!」
ルーが手をのばしました。パパに抱かれたルーと、ママに抱かれたメートヒェンは、それぞれの体に抱きついてよろこびました。
「ごめんね。メートヒェン。ぼく……」
メートヒェンの体はふわふわとやさしくて、とてもいいにおいがしました。
「いいのよ。ルー。ちゃんとわかってる。それより、今日はみんなでお祝いしないとね」
メートヒェンが言いました。
「そうだよ。ルーがひとりで歩いたんだ。さっそく、みんなでお祝いだ」
パパも言いました。ママもうれしそうに笑ってルーの頭をなでました。
ルーは、この時、3才になっていました。ふつうなら1才くらいには歩けるようになるのですから、ルーはとてもがんばったのです。ルーが生まれた時に、お医者さんはとてもむずかしい顔をして言いました。
「この子は、ずっと歩けないかもしれない」
と……。でも、ルーは奇跡を起こしました。クリスマスの奇跡です。パパもママもメートヒェンも言葉にならないくらいよろこびました。
「あ、姫だ!」
「姫が帰ってきたぞ」
小人たちの声がしました。ルーが下を見ると、パパとママの足の間で、小人たちがとんだりはねたりしてさわいでいます。
「え? 姫ってメートヒェンのことだったの?」
ルーがきくと、小人たちがうなずきます。ルーはくすっと笑いました。
「まあ! ルーってば、何がおかしいの?」
メートヒェンが言いました。
「だって、おかしいんだもの。メートヒェンがお姫さまだなんて……」
「あら、女の子はだれだって、みんなお姫さまなのよ」
メートヒェンが言いました。
「ママも?」
「そうよ。ルーだって、いつかはステキなお姫さまとめぐり会うのよ」
「ぼくも?」
「そうよ。そしたら、みんなで歌ったり、おどったりしてパーティーをするの」
それを聞いて、ルーははっと思い出しました。
「そうだ! ぼくたち、お歌をさがしていたんだよ」
ルーの言葉に、小人たちがうなずきます。
「お歌だって?」
パパが言いました。
「ルーは歌も歌えるようになったのかい?」
パパはとてもうれしそうでした。
「それじゃあ、パパがピアノを弾いてあげよう」
パパはルーを抱っこして階段を下りて行きました。みんなもあとからついて行きます。
そして、大きな暖炉のある広いリビングで、パパはルーをひざにのせてピアノを弾きました。それは、とても美しい曲でした。ルーはうっとりとその音を聞いているうちに、自分も声を出して歌いました。それは、とてもきれいな声でした。これまでいろんな音楽を聞いたり、声の出し方を練習したりしてきたことが、今、結果としてむすびついたのです。パパもママもメートヒェンも、それに、小人たちもみんなうれしそうに歌いました。ルーはあまりたくさん歌ったので、つかれて眠ってしまいました。
そして、次に目がさめた時、ルーはたくさんのプレゼントにかこまれていました。
「メリークリスマス! ボクは子犬のユング(男の子)」
「おれはトカゲのブルーダー(お兄さん)」
「はじめまして。キリンのタンテ(おばさん)よ」
「わたしはネコのシュベスター(お姉さん)」
「クラゲのオンケル(おじさん)だ」
ルーのまわりはとてもにぎやかになりました。
「わあ! メートヒェンのお友だちがいっぱいだ」
「よかったわね。ルー。でも、ルーの1番のなかよしはわたしよ」
メートヒェンが言いました。それを聞いて、ぬいぐるみたちがさわぎます。みんな、ルーに1番に抱っこしてほしいと思っていたのです。
「わかった。それじゃ、みーんないっしょに……」
ルーは両手をいっぱい広げると、ぜんぶ抱きしめて言いました。
「きてくれてありがとう。メリークリスマス! いっしょにクリスマスをお祝いしよう!」
そのまわりで、小人たちも歌います。どうやら、これからさわがしくなりそうな予感がするクリスマスの朝でした。
(おわり)